山本有三の小説「真実一路」の舞台となった千葉の大原、太平洋に面する海水浴場近くの酒蔵が、木戸泉酒造。全国で唯一、高温山廃造りのみ酒造りだ。乳酸菌発酵による無添加で造られる酒は、しっかりした味の骨格と、太く豊かな酸を持ち、コアなファンが多い。特徴的なこの酸味を、もっとも生かした熟成酒が「AFS」である。安達源右衛門、古川董、庄司勇、酒を開発した3人の頭文字をとって名づけられた。 いわば“0段仕込み”。高温山廃酒母をそのまま搾って造っている。ただでさえ濃厚な高温山廃造りの酒が、さらに濃厚に進化して、酸味と甘味がパワーアップ。同量の酒を造るのに、三段仕込みの酒の十倍以上、手間をかけて造った貴重な酒。そして、その手の込んだ酒を、さらに数年以上熟成させて古酒にした。酸味と甘味が豊かな酒ほど、熟成すると美味くなるのだ。数年から、最も古いものは40年も熟成させている。熟成古酒は数あれど、ここまで濃厚な酸味があるのはAFSだけだ。