個性的な酸味が後を引く酒だ。とくに、酵母を培養するために造る酒母の古典的製法“水酛”を使ったシリーズに着目したい。水酛とは室町時代の僧侶が発明した、生米を浸漬し自然に生まれてくる乳酸をもとに酵母を培養したもので、これを使うと酸味が強い酒になりやすいのが特徴。その味わいはまるで苺ヨーグルトで、寝かせるとチーズを思わせる動物的な風味も出てくるなど、現代の日本酒の概念を覆す酒質である。 他にも、同じく天然の乳酸を生かして造る山廃酛を使った酒や、木桶で寝かせた酒など、蔵付き酵母のみで醸した野生味あふれるワイルドな酒質が「花巴」の持ち味だろう。手がけるのは、蔵元杜氏の橋本晃明氏。多湿地帯で発酵が進みやすい地元の環境を生かし、発酵によって旺盛に出てくる酸味を抑えるのではなく、思い切り“酸を解放”した酒造りをモットーに、どこまでも風土に寄り添った酒質を目指す。 酒に合わせるならば、地元の発酵食として親しまれている柿の葉寿司のような発酵食品のほか、醤油を使った甘辛いすき焼きなどと相性がいい。洋食だけではなくアジア料理にも合うのが魅力で、発酵系のチーズを使った料理や、魚を発酵させて作るナンプラー(魚醤)を使うタイ料理、ジビエのような野趣あふれる肉料理もおすすめだ。(山内聖子)
花巴のクチコミ・評価
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花巴の酒蔵情報
名称 | 美吉野醸造 |
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特徴 | 奈良県吉野地域は、古くより多くの詩歌に詠まれ、日本一の桜の名所として名高い奈良県の吉野山や、吉野杉で知られる地域である。雨が多く温暖で山深い地域であることから、柿の葉寿司など保存のための発酵食の文化が長らく生活に根付いてきた。この地にて蔵を構える「美吉野醸造(みよしのじょうぞう)」は、そういった吉野の文化に寄り添う唯一無二の味わいを醸す酒蔵である。吉野桜が咲き誇る様子から名付けられた代表銘柄「花巴」は、明治時代まで吉野山にある蔵元で醸されていたが、火事で蔵が焼失したことから1912(大正元)年に地元有志4軒で合同会社を設立。現在の吉野川のほとりに蔵をつくり、銘柄を引き継いだ。型にはまった酒造りではなく、その土地ならではの個性を表現することを第一とし、最近では2005(平成17)年から蔵付き酵母のみで醸す「山廃造り」をスタート、そして2017(平成29)年からは製造する酒全てを酵母無添加での醸造へと進化させた。「酸を解放させる」という独特の個性ある味わいは、「吉野にある美吉野醸造だからこその味わい」という、地域の背景を知ることによって完成する味わいである。 |
酒蔵 イラスト |
![]() (山本浩司氏撮影+加藤忠一氏描画) |
銘柄 | 花巴 蔵王桜 南遷 百年杉 天彩 谷瀬 自然淘汰 |
HP | 酒蔵ホームページはこちら |
所在地 | 奈良県吉野郡吉野町六田1286 |
地図 |
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