しんどい仕事をチームで乗り越えて、いつもなら飲みに行くところを、緊急事態宣言なので一人帰る。
雨の中、帰り道の酒屋に寄って一本選ぶ。
懐かしいな。
大学時代のバイト先に置いてあった「吉乃川」が目に留まって、買って帰る。
京都の花街の小料理屋で、カウンターの中に入ってお皿を洗ったりお酒を出したりしていた。
そこで飲まされて覚えた、最初の日本酒。
これの一升瓶で燗をつけるか、冷蔵庫から300mlの冷酒を瓶ごと出すか。
値段があって無いような店で、舞妓さんや芸妓さんを連れた芸能人や有名企業の社長がふらっと同伴で来てくつろいでいた。
当時は若過ぎて、お客さんから注がれるお酒の断り方を知らなかった。
貧乏学生だったので掛け持ちバイトの疲れと、慣れない日本酒で目が回り、ミスをやらかす。
他のお客さんに頼まれた芋焼酎のロック用の氷を割ろうとしてアイスピックを手に刺してからは、「お兄さん」と呼んでいたお店のオーナーに「この子は飲ましたらあきまへんねん」、と止められるようになってしまった。
今は止める人がいないので、「吉乃川」を心置きなく飲む。明日も仕事だけど、イヤな仕事だっただけに解放感がすごい。
ヒールもスーツも脱いで、だらしない格好で飲む。
若いお酒に一旦火を入れ、落ち着かせただけのことはある。穏やかな旨みが広がる。
今日はぶっつけの緊張感あふれる仕事だったが、なんとかミスはしなかった。
影で支えてくれてる人達の御守りみたいな書類を手元に、落ち着いて乗り切れた。はず。そして「断る」ことができた。
そりゃそうだよな、コレをカウンターで飲まされてたあの頃から、どれだけ経験積んでるんだって話で。
仕事だけでなく、お酒に関しても今の方が、美味しさがわかる。仲間と飲めればもっと美味しいだろうけど、今日のところは。
お疲れ様、自分。
ちゃんと成長してるやん。
特定名称
純米吟醸
酒の種類
一回火入れ
テイスト
ボディ:普通 甘辛:辛い+1