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2026
4/16
なかむら さん
満足度 3.0
達磨政宗
海中熟成酒
私は長いあいだ、海の底で体を横たえ、静かに口を閉ざしていた。
ある日、フジツボがやってきて、私の体に触れ、入りたそうにしていた。私は思わず身を固くした。
そんなものに口を開けるわけにはいかなかった。
また別の日には、波がやってきて、私を左右に揺らし続けた。
その揺れは意地悪で、どこか甘く、知りたくもない嘘や虚栄心を、私の奥にまで染み込ませていった。
気づけば私は、もう昔の私ではなかった。
ある夜、あなたは何のためらいもなく私の口を開いた。
その瞬間、私はひどく恥ずかしくなった。
私の中身は茶褐色に変わり、香りも味も、かっての私とはまるで違っていたからだ。
あなたは私をひと口含み、静かに息を漏らした。
「深く熟成されている。旨味が丸くて、余韻が濃い。日本酒であって、日本酒でないような.....」その言葉を聞いたとき、私は少しだけ後悔した。
海になんて潜るんじゃなかった、と。
けれどあなたは、そんな私の後悔など知らぬふりで、目を細めて私を眺め、
私の中身をゆっくりと舌の上に絡めとっていった。
そのたびに、私は自分でも驚くほど満ち足りていった
達磨正宗 (岐阜 / 白木恒助商店)

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