しろこさんさん(2022年4月4日)の日本酒「総乃寒菊」レビュー

　周りの人に「今さら？」と言われながら、この半年ぐらいKing Gnuの「白日」をずっと聴いていた。

　途中のリズムの展開とか音と声のバリエーションとか、本当にうまいバンドだな……ってことより、歌詞が自分の痛みそのもの過ぎる。

　特に冬に入ってからは、白い息を吐きながらイヤホンで聴いて「どうやって白紙に戻そう」とばかり考えていた。


♪ 真っ新に生まれ変わって
　人生一から始めようが
　へばりついて離れない
　地続きの今を歩いてるんだ


　ちょうど職場が変わるので、いろんなものをリセットするのに絶好のタイミング。新たな場所、新たな仕事、新たな人間関係の圧倒的情報量の中で、今までのすべてを忘れてしまいたい。

　そう思いながらも、慣れた場所を離れるさびしさから「無かったことにしたい」飲み相手の誘いを断れない。

　そして、自分も稀少なお酒を分ける相手が見つからず、酒びんを抱えて出かけてしまう。

　この日は「寒菊　愛山５０ Red Diamond 純米大吟醸」を持ち込む。

　キラキラした高級感あるラベルがいい。そして、中身は２人とも好きなフルーティでぴちぴちした華やかな飲み口でスッと切れるところも好ましい一本。

　忙しい中で、この日だけは時間が止まったような気がする。こんなことしてる場合じゃないのに、差しつ差されつで思考回路がバカになる。

　いいお酒の「飲ませる力」を言い訳に、罪深さをごまかしている。そして、いつも頭が真っ白になって眠ってしまう。


♪ 朝目覚めたら　どこかの誰かに
　なってやしないかな
　なれやしないよな
　聞き流してくれ


　ここの投げやりな歌い方に、２人でいるのにふっと酔いから醒める瞬間を思い出す。

　冬が終わったら、もう寒くない。
　だから、ひとりでも大丈夫。

　頭では何度も言い聞かせているのに、花冷えが続いてるのを言い訳に「もう一度だけ」と手を伸ばしてしまう。

　ほんとうの気持ちは。

　春よ、来ないで。